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工房の仕事でクロスを補修してきた帰り道。
弟達との待ち合わせで、急いで工房に帰る。
それにしても仕事先でお客さんにもらったこのカルピス、体脂肪を減らす効果があるみたい。

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もう8月、午後の時間はかなり暑い!
飲み干したカルピスを手に持って工房に戻っている道中、公園の近くに来た時、小学生の子供たちがあらわれた。
彼らの手には牛乳の紙パックやお菓子の箱で作った船が握られていた。
公園の噴水の水がそのまま川のように流れて坂の下の池に溜まるようになっている。
船で遊ぶんだな。私もよくやったなぁ…。
4人のうちの1人だけ船を持っていなかった。
誰かの弟なのだろう。他の子供と比べてまだ小さい。
立ち止まって見ていた私に気付き、手にしていたペットボトルを見つけて、近づいてきた。
「おじさん、それいらないならボクにちょうだい。」
このペットボトルを船の代わりにして遊びたいのだろう。すぐに分かった。
当然、中身のないペットボトルなど捨てるだけだが、『おじさん』が気に入らなかった…。
その子の額を鷲掴みにして、必殺アイアンクローをしながら「ダメだなぁ〜!」と言い放った時、弟達の顔が浮かんだ…。
あぁ、この感覚、この必殺技、こんなこと何十年も前に弟にしたっけなぁ…。
もう私もいい大人だ。こんな酷いことされた者の気持ちが分からないワケでもない。
あのときの弟達の気持ち、すまないマイブラザーズ…。すまない、少年よ…。
痛い痛いと泣きながら私の手にタップを繰り返す少年をしばらく見ていたあと技を外し、
私は、アイアンクローをしてしまい申し訳なかったと少年に詫びた。
額を押さえ、涙をボロボロ流している少年を見て思う。そんなに自分だけ船で遊べないのが悔しいのか⁉︎ 分かるぞ! 私はこう言った。
「このペットボトルで私が少年に船を作って差し上げよう!嬉しいか?」
そう聞くと、額を押さえ、少年は涙をボロボロ流している。
よっぽど嬉しかったのだろう…。
私は公園のコンクリートに少年を正座させて、財布から道具を取り出す。

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財布に入るカードサイズのマルチツール。
ブコツが私にくれたモノの中で一番のお気に入りのモノだ。
マルチツールのハサミとナイフを取り出し、ペットボトルで船を作り始める。

私にはこの後、兄弟達との待ち合わせがある。
少年には申し訳ないが、さっさと済ませてしまおう。
炎天下のコンクリートは焼けるように熱い。
のんびり作ってもいられない。

コンクリートで正座しながら少年が『あっち!あっち!』と言っている。
ん?あっち?どっちだ?もう少しだから座って待ってろよ!少年!

ハサミで切って船の形を作っていく。
それっぽく帆なんか付けてみようかな?


あっという間に完成だ!
コレ、ちゃんと浮くのかな…。少年は正座しながら涙を流している。
私は少年を立ち上がらせ、なぜか赤く腫れ上がっている膝小僧の砂を払いながら、「そんなに喜んでもらえてお兄ちゃんも嬉しいよ。さぁ、コレを持って遊んできなさい!」
少年の背中をポンと叩く、仲間のもとへ泣きながら駆けていく少年の後ろ姿に小さく『バイバイ』と手を振る。
待ち合わせの時間は過ぎている。 こりゃ遅刻だな。
日射しが強い。缶コーヒーでも飲みながら帰りたいが、工房のアイスコーヒーをより味わうため、グッと我慢して歩き出す。
あー、喉が渇いたぁ!