この夏の暑さに対抗するため、私はジオン公国で量産されている水筒を持ち歩いている。

私の自慢の一品で、500mlのペットボトルのジュースを買ってはこの水筒に入れ、常に冷たいジュースを楽しんでいた。
ジオン公国製の証、シリアルナンバー付き!

しかし、私は失敗した、失敗した、失敗した、失敗した、失敗した、私は失敗した…。
この水筒は炭酸飲料を入れてはいけなかったのだ!
たしかにコーラを入れて、蓋を開ける際には炭酸の気圧で圧迫されて蓋がなかなか回らない。
あとから知人が偉そうに、「炭酸のガスがステンレスを腐食して弱くさせるんだぜ」みたいなことを言ってきた。
結果論を語るな!私たちは今を生きている!
とはいえ、ジオン製の水筒でも炭酸には勝てず、無理やり蓋を回し開け続けたことで、パッキンがイカれてしまい、振るとジュースが外に出てくる仕様になってしまった。
弟たちが、『説明書読めば良かったじゃん』と正論を私の背中に投げつける。
黙れ!痴れ者が!
私に正論は効かない!正論は聞かないのだ!

そもそも炭酸飲料はペットボトルで飲めと言うことか⁉︎この暑さの中、ぬるくなったコーラを『お、美味しい』と自分に嘘をつきながら口にしろというのか⁉︎
『否っ!』私は自分に嘘は付けない!
誓おう!私は自分に嘘はつかない!冷たいコーラを飲む度に自分で自分を傷つけたりはしない!
「ジーク、ジオンッ!!」
私は世界に問いかける。こんな世の中を許す事のできない同胞はいないのか⁉︎スマホをピコピコした…。
あ…。出てきた。炭酸飲料を入れられる水筒… すぐ出てきた…。
FLSK(フラスク)。こんな水筒があったとは…。

このスタイリッシュなボトルに炭酸飲料が入れられる…。キンキンに冷えたビールが24時間飲めれる…だ…と?


構造としては蓋を回して開けるときに炭酸の気圧を逃してくれる作りになっているようだ。

FLSK(フラスク)のボトルは魔法瓶に採用される真空二層構造の技術に加え、ボトル内側の外装(ステンレスの壁)に、銅のコーティングを行うことでさらに保温力を高めているとの事だ!
ジオン公国の技術力を凌ぐというの…か?
私は、蓋を閉めてもコーラが飛び出し、且つ自動的に炭酸が抜け、シュワシュワ効果を弱めてしまうジオン製の水筒を手放す時が今、この瞬間なのだと察した…。
ありがとう、私の水筒。そしてありがとう、もうじき出会う私の水筒よ…。
私は右腕を胸に当て、大きく息を吸い込む。
後ろから弟たちが『パッキン交換すれば、まだ使えるんじゃね?』と私の背中に正論をぶつけてくる。
正論は嫌いだ!正論はなにも生み出さない!
再び息を吸い水筒に向かって叫ぶ。
『ジーク、ジオン!!』